デザイン

当時増備が続けられていた8600系をベースに車体をステンレスに置き換えたものであるが、材質上妻部はごくわずかに後退角の付いた三面折妻構造の切妻に近い形状となった。屋根肩部の曲率と側板腰部の絞りも単純かつ強度確保が容易な形状に変更された。このため、丸い前照灯に角ばった車体を組み合わせたデザインから8000系のアルミ試作車である8069Fに近い印象がある。

外板はコルゲート加工をした薄板で軽量化を図っており、基本的には無塗装である。しかし着色フィルムを全面や側面に貼る事で無機質感を和らげているが、汚れた際の補修がやりにくかったため、後に塗装に改められた。

内装は8600系に近いが、運転台は大幅な機器構成の変更でデスクタイプとなり、横軸2ハンドル(マスコン+ブレーキハンドル)に改められている。

車体の長さは他の近鉄通勤形車両と同じ20000mmであるが、全長は烏丸線への直通用に当てる計画だった事から京都市交通局10系と同じ20500mmと近鉄標準の20720mmよりも若干短くなっている。

性能

地下鉄対応車両になる予定だった事から制御方式には近鉄で初めて電機子チョッパ制御が採用された。しかしこちらで述べたように本形式のみでの際に終わり、実際に乗り入れに対応した3200系では新設計のVVVFインバータ制御が採用されている。

主電動機は在来車の三菱電機MB-3064-ACはそのまま使用出来ないため、新規に三菱電機でMB-3240-A直流直巻式整流子電動機が採用された。この電動機は将来電機子チョッパ制御を標準軌全線へ展開する事を視野に入れて設計されており、幅広い速度域に対応する必要があった事と青山峠越えに対応するためであった。

駆動装置はWNで歯車比は17:84である。MT比は2M2Tで中間電動方式が採用された。

台車

当時の近鉄で標準的に採用されていた車体直結式ダイアフラム形空気バネ台車である近畿車輛・KD-84(電動車用)と84A(制御車用)をそれぞれ装着する。設計は特急車用のKD-83系を基本としているが、積空比の大きい通勤車用に乗客数の多少に関係なく床面高さを一定に保ちかつ乗り心地を向上させる目的として空気バネを大直径化したものである。

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